シェアする

農業のウェブ活用事例~新潟大学での講演内容

nougyou

農業もエンターテイメントだ!農業のウェブ活用事例

2016年9月21日に、新潟大学農学部にて農業のウェブ活用をテーマに講演をいたしました。その時の内容をあらためて記事掲載いたします。

人の感情に訴える情報とは何かを考えさせらた、米販売の経験

個人事業主時代に、まずビジネス課題として取り組んだのが、「米のネット販売」でした。

2009年の創業時、EC市場では米は価格競争の一途。普通に売っても価格競争の中に巻き込まれるだけで、利益は確保できない。まさにレッドオーシャンでした。そんな中から、自分自身の強みを活かして販売出来る方法を模索し、「出産ギフト」として赤ちゃんの出生体重分の米を詰め、販売することを始めました。

%e3%82%89%e3%81%8f%e3%81%a6%e3%82%93

使用している米は「特別栽培米」という減農薬・有機肥料で栽培されたお米。当初はこの「特別栽培米」を訴えれば売れていくものと考えましたが、残念ながらそれだけではなかなか売れなかったのです。

ターゲットが求めている真の価値は「特別栽培米である」ということではなく、「出産というその子にとって一生に一度のメモリアルにふさわしい、特別な記憶に残るものを贈り、かつ先方に喜ばれたい」ということだと改めて考え直し、掲載するコンテンツを精査し、実体験を踏まえた物語を掲載することにしました。すると、メディアにも注目され、全国から注文が入るようになっていき、かつご購入くださったお客様から多くの喜びの声をいただくようになりました。「通り一辺倒のギフトのやり取りではなく、お祝いしてくれた遠方の親戚にも、赤ちゃんを抱っこしてもらったような体験をしてもらい、感謝の気持ちを伝えませんか?」という訴えとともに、そのシーンを想像できるよう、ビジュアルも工夫しました。

つまり、「特別栽培米」で安心安全であることが、ユーザーが求める第一の価値ではなく、「出産というメモリアルにふさわしい特別感」がユーザーが求める第一の価値であったわけです。

この経験から、ネット上に掲載すべき情報とはデータの記載ではなく、「物語にいかに心を動かしてもらうか」が鍵であるかを身をもって学んだのです。


農産物の本当の価値は、商品だけでは伝わらない

弊社は現在、「燕三条畑の朝カフェ」という、地域の農業・農産物をブランディングするプロジェクトに携わっています。観光農園ではない、普通の農家の畑にお客様に来て頂き、農作業体験や獲れたての農産物をその場でカフェスタイルで召し上がって頂くイベントです。2011年よりスタートし、2013年にはグッドデザイン賞BEST100を受賞。ファンクラブもあり、現在会員数は全国(海外も含む)に600名以上。年に5~6回ほど開催されますが、毎回抽選となる人気のイベントとなっています。

燕三条畑の朝カフェ燕三条畑の朝カフェでは、農産物の本来の価値は、「テロワール(風土・気候)・生産者の想い、栽培への姿勢」など全てを知ってもらってこそ伝わるものだと考え、まず畑に来てもらい、土地の魅力・生産者の想いに触れてもらいながら、その農園のファンを増やしていこうという取り組みです。また、燕三条は金属加工で有名なまちでもありますので、朝カフェでは、地元の有名アウトドアメーカーのスノーピーク製のテーブル・イス、世界的に有名なレストラン「ロブション」のカトラリーを使用してテーブルセッティングをするなど、農商工連携の取り組みも行っています。

私自身もサラリーマン家庭で育ちましたので、兼業農家に嫁いだときは獲れたての農産物の美味しさに衝撃を受けました。それと同時に、栽培の大変さを知り有り難さを感じたものです。

朝カフェへご参加頂くこれまで農業に縁の無かった皆さまも、きっと同じように感じていることと思います。それと同時に、畑の気持ちよさ、清々しさや、瑞々しい農産物を目前にし、手に取り体験した感覚に心が動かされたのだと思います。

体験から伝わる真の価値

通常の流通では、農産物のほんの表面的なもの(見た目や味)でしか評価ができません。しかし、生産現場に赴き、生産者の想いや苦難を目の当たりにしたとき、その農産物への価値(評価)が大きく変わるのです。より有り難く感じるのです。農業のウェブ活用において、この物語を伝えることがいかに大切かをぜひ皆さんにも考えて頂きたいと思います。



SNSでの発信と、リアルな体験がファンを生み出すポイント

農業従事者にとって、ソーシャルメディアは自身の農産物をPRするうえで大変便利なツールです。スマホさえあれば、畑からリアルタイムで発信ができます。先述した朝カフェに参加している農家も、ソーシャルメディアを活用して新しいファンを獲得していますので、事例をご紹介したいと思います。

表現豊かに、魅力を発信する渡辺果樹園の事例

%e3%82%8f%e3%81%9f%e3%81%aa%e3%81%b9

新潟県三条市にある渡辺果樹園は、2001年にウェブサイトを開設し、ネット販売にも取り組んでいます。新潟の名産品である西洋梨「ルレクチェ」では検索上位表示され、ルレクチェ販売の季節(11月下旬~12月)になるとネット経由の注文もあるとのこと。しかし、そもそも西洋梨「ルレクチェ」自体を知っている人が少ないため、バカ売れしているという状況ではないとのことでした。

メディア掲載・SNSでの発信で認知度を高める

渡辺果樹園の園主である渡辺康弘氏は、畑の朝カフェの実行委員長でもあります。積極的に生産以外のことにチャレンジし、様々な新しい取り組みで地域の農を引っ張っていらっしゃるので、度々メディアにも取り上げられます。

こうしたメディア掲載がきっかけとなり、認知度を高めていること。さらに、facebookページやfacebook個人アカウントにて栽培への想いや、苦労なども発信していることで、渡辺果樹園の理解者・共感者が増えています。

農家というのは、皆さんが想像するより遙かに忙しく、作物は待ったなしに育っていくので休む暇がありません。しかしながら、「地域を盛り上げよう、お客様に喜んでもらいたい」と、朝カフェや様々なイベントを通じて活動されている渡辺さんには本当に頭が下がります。でも、これらの活動やウェブでの発信が、農園の危機を救ったそうなのです。

大口のキャンセルも、事なきを得た。着実にファンが増加し個人顧客が増加

2年ほど前、それまで長年の大口の取引があった百貨店から急にキャンセルの連絡が。価格で安いほうに百貨店の契約が移ってしまったとのことで、さぁ困った・・・となりました。

しかし、これまでの着実な活動やSNSを使った発信などで個人顧客が大幅に増えており、百貨店の大口取引キャンセルもマイナスになることなく事なきを得た。という体験があったそうです。

このことから、リアル・ソーシャルメディア・ウェブサイト それぞれ動かしていくことの重要性を感じられたとのことでした。

土へのこだわりを全身で表現

「土づくりからこだわっています。土壌が豊かです。」と文字で書き連ねても、なかなかイメージできず伝わりにくいものです。渡辺さんはそれを表現するためにとある動画をfacebook上に公開しました。

渡辺果樹園の動画

クリックしてぜひ動画をご覧になってみて下さい!

写真や文字だけではなく、いかに興味関心を持ってもらおうかと考えられたこの動画、素晴らしいなと心から思います。


SNSで人間関係をしっかり構築し、ファンを増やす。内山農園の事例

%e3%81%86%e3%81%a1%e3%82%84%e3%81%be

新潟県三条市にある、米や小麦、小松菜やイチゴなどを栽培する内山農園。こちらの園主である内山徳寿さんも、朝カフェのメンバーでありますし、燕三条イタリア野菜研究会を立ち上げた人物でもあります。新潟でも栽培が難しい小麦の栽培にもチャレンジ。彼も度々メディアに取り上げられる気鋭の若手農家です。

ウェブサイトは今年(2016年)に開設。内山さんはfacebookを活用して、ファンを増やし、現在はfacebook上で農産物がどんどん売れていく・・・という状況にあります。

まめなコミュニケーションで人間関係をつくる

内山さんは、生産現場の様子や子育ての苦労なども、まめにfacebookで発信しています。さらに、単に一方的な発信ではなく、コミュニケーションを取る手段として使っている・・・という印象を強く受けます。こうした日々のコミュニケーションから、内山さんのファンがどんどん増えていっている印象です。

欲しい方いますか?という有益な情報提供

内山農園ではイチゴを栽培しています。越後姫という品種のイチゴで、果肉の柔らかさ・繊細さから新潟県外にはあまり出回ることのないイチゴです。地元スーパーで販売されていますが、やはり完熟で獲れたてのイチゴはやはり格別。内山農園では完熟獲れたての越後姫を直接購入することができます。

utiyamaイチゴの季節になると、内山さんのfacebookには「今日は10パックありますが欲しい方いますか?」という投稿がされています。その投稿のコメントには、「2パック欲しいです。10時頃取りに行きます!」などのコメントが殺到します。

つまり、収穫して写真を添えてfacebookに投稿しただけで、すぐさま完売してしまう・・・しかもお客様はわざわざ農園まで買いに来てくれる。という状況になっているわけです。農業従事者にとっては、作業の手を止めずに販売までできる・・・とても願ったり叶ったりな状況ですよね。

人間関係が出来ないないのに、「買って!」「欲しい人連絡ください!」と投稿してしまうと、【売り込み・押し売り】となってしまい、良い印象を与えることはありません。facebookなどのSNS活用において、ここを間違ってしまう人が未だ多くいらっしゃいます。

しかし、内山さんのfacebookでは人間関係がすでに構築されており、facebookの投稿はいろんな人のコメントもfaco2faceで見れますから、「買いたい!」「すごく美味しいよね!」とコメントの付いた投稿が拡散されていくことで、初めてその情報に触れた人にとっても第三者の評価付きの情報であり、信頼感があるので、購入に至りやすいのです。

さらに、直接買いにいったお客様は、来園した際に「イチゴ買いに来たよ~」という投稿をしてくれますので、ますます情報が広がっていきます。

このようにSNSを使って良い流れが出来上がったのも、「日々のリアルな活動やSNSで人間関係を構築していったからこそ」ですよね。


まとめ~農の本来の価値を理解してもらうために何が必要かを考え抜く

これまでにも記載したように、農産物の本来の価値は、商品そのものだけではなかなか伝わらないものです。商品だけを切り取った場合、農産物の見た目や価格競争など多くの比較に晒されることとなります。

しかし、生産現場に触れ、生産者の想いを知ってもらうことで、商品だけでは伝わらなかった本来の価値を理解し共感してくれる人々が増えます。本来の価値を理解し共感してもらえれば、価格などで比較されることが少なくなります。

ファンになってもらうためにどのようなコミュニケーションが必要なのか、ひとつひとつ考えてみてください。

1.お客様が求めている真の価値を考え、「私にはその価値を提供できる」という物語を伝える
2.商品を通じて得られる体験(価値)を想像させるコンテンツを作る
3.ウェブだけでは伝わらないことがあるので、リアルなコミュニケーションも考える
4.ソーシャルメディアは人間関係を構築する場と捉える
5.ファンになってもらうためにどんな物語を伝えるべきか考え抜く
6.ウェブサイト・SNS・リアル、それぞれの役割を考えて活用する(どれかひとつではなかなか上手く機能しない)
7.感情が動かなければ行動しない=感情を動かす情報(コンテンツ)でなければ、購入には至らない


本記事にて事例をご紹介したプロジェクト及び農園のウェブサイトはこちら

●燕三条畑の朝カフェ 公式ウェブサイト
●渡辺果樹園ウェブサイト
●内山農園ウェブサイト

農業もエンターテイメント。農業従事者にとって当たり前の日常も、初めて農業の現場に触れる人々にとっては、テーマパークのようにワクワクする魅力あふれるものなのです。見せ方・魅せ方は色々あります。ぜひトライしてみてはいかがでしょうか。


投稿者プロフィール

あだち りえ
あだち りえ株式会社スマイルファーム 代表取締役
WEBディレクター・WEBデザイナー・コンサルタント
WACA公認ウェブ解析士マスター/GAIQホルダー

アクセスログ解析の専門家として、自治体サイトや大規模メディアのログ解析~改善コンサルティングを実施。「難しいをわかりやすく!」をモットーに、ウェブマーケティングの講師として各種セミナーに登壇。
中小企業庁ミラサポ・(公財)にいがた産業創造機構の専門家としても活動中。3人の男児の母。

スマイルファームがおすすめする、HOTなコンテンツはこちら


日本初のサイト分析に特化した番組配信中
エステ・ネイル・カフェなどの店舗向けのウェブ集客ノウハウ

ウェブサイト制作・アクセス解析・サイト診断のご依頼・ご相談・お見積り

お問い合わせ


Tel 0256-47-1950

トップへ戻る